2008年4月15日

 散歩

10チャンネル朝10時から“チイ散歩”を放映している。役者である地井武雄さんが駅を中心に歩き回り、その町の特色を紹介してゆく番組である。

この番組を鑑賞できるのも私が、老人で時間に余裕があるからだ。だからと言って、一日中家に居る訳ではない。幸いにして、いまだに少しの仕事を持っているから、会社に行く。家から会社までは約6キロほどだが歩いてゆく、所謂 “散歩” がてらにである。1時間でつく、TVを観終わってからだから、昼になってしまう。雨の日は体に悪いので歩かない。そして、晴れた休日には通勤ルートをはやめて、新しいルートを探したりして散歩する。 

そんなゆったりした日に事件が起きたりする。かなりの速さで歩いていると「スーツ」 と、追い抜いてゆく人がいる。昔、陸上競技をしていたし、負けず嫌いなこともあって、他の人に追い抜かれるのは、虫の居所にもよるが、耐えがたいこともある。そんな時は、抜かれれば抜き返す。私が抜いてそのままならば、何も問題は起こらない。大体は、これで済むのだが、中には抜き返す人もいる。これから始まることは本来優雅である筈の“散歩”が激しい競争を巻き起こす。

全盛期の瀬古、宗兄弟が別大毎日マラソンにおいてゴール直前まで繰り返したデッドヒートを彷彿とさせる、老人の引用は時として、あくまでも古いので、多少の違和感もあるだろうが仕方のないことだ。

それはともかく、抜きつ抜かれつの戦いであるし、元来目的地を決めているわけでもないから、時として、とんでもない地方にまで足を延ばしてしまうこともある。先週の日曜激しい競争の果てに、ふと眼を上げると、チョモランマのイエローバンド、その上にサウスコルがはっきり見えるところを歩いていたのだった。道理で息苦しい。

とまあ、これは明らかにウソではあるが、年寄りに免じて大目に見てほしい。それはそれとして、私が勝利するのなら、あらゆる手段を講じる。 相手の脚力が明らかに上の場合、反則お承知で、走って抜き早足に戻してから横町をスイと曲がる。相手も相当な速度であるから、急には曲がれない。従って、まっすぐ行ってしまう。

今のところ、戻って再び競争することはない。この場合、私が勝利したという考え方をしている。冷静に考えてみれば、これほどの卑怯な手を使う私は、もしかしたら人間的に問題があるのかもしれない。



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