開発物語

テレビ

芋はもう無いのだが、あ!今はもう無いのだが、45年ほど前、戸塚駅からほど遠くないところに「日立横浜工場」がありました。若い私はそこでテレビの構造設計をしていたのです。「第二次オイルショック」の影響か?「30運動」(なんか政治運動のように聞こえるけれども)、30%コストダウンせよ!との指令が「テ設」=「テレビ設計部」に下令されたのです。I先輩の指導の下、コストダウン活動をしました。I先輩は「30%なんて言うばかげた数字を実現するには誰もやっていないことをするしかない、それも、徹底的にやるしかない

ねじをなくせ!

メッキ品をなくせ!

電機部品以外全部プラスチックにしろ!

とにかく徹底的に部品を減らせ!

矢継ぎ早に指示が飛び、多分テ設内で一番のコスト削減が出来たのです。(I先輩の手取り足取りの指導がなければあり得ないことでした)私にも、ある目的があって、当時本気で、(多分1000万ぐらいの初期投資がぱあになるようなチャレンジでした)仕事をしていました。こんなことがあって、私は一躍 “若手のエース” と呼ばれるようになりました。(本当はI先輩がテ設のエースなのです)

 これが私の開発の原点です。

―追伸―

このとき開発した技術が、今一般的な、プラスチックの(ひけ)対策として、教科書に載ったりして、広く流布されていることを知り、I先輩が生きていれば、ともに喜びたい気分になり、また誇らしく思いました。

運転免許証

コニカミノルタがまだコニカだった頃、一つの相談事が舞い込んできました。当時の運転免許証は顔写真の部分に紫外線硬化樹脂(液体状で、紫外線を当てると硬化する樹脂)を塗布し、偽造防止対策としてきた。紫外線硬化樹脂の入手が容易になり偽造防止効果が弱くなったため、新たな対策が求められていた。そこで、免許証の印刷面全面に特殊フィルムを熱転写する方式を検討し、ホットスタンプメーカーに試作を依頼していたのだが、

1) 大きすぎて今のスペースに入らない

2) 温度コントロールが甘く定着品質がばらつく

3) 現状より大幅なコストアップになる

以上の3点の大きな問題を抱えていた。なんとか解決できないか?という相談事だったのです。当時私はホットスタンプなる物を見たことはなかったけれども、コピー機で採用されている技術=トナー定着部を知っていたこと、30%コストダウンの経験もあったこともあり、すぐに(といっても1週間ほど)ラフ構想図を持って、参戦を申し入れ、数ヶ月後、見事3項目をクリアし、正式採用が決定したのです。何が結果を分けたのか?ホットスタンプメーカーの常識に縛られず、他の業界の成功事例を知っていたことでした。

技術的には簡単なことです。彼らと全く逆なことをしたのです。彼らは定着ロールを太くし(温度を一定に保つため)ロールの外側にヒーターを配置していました。私は定着ロールを出来るだけ小さくし、ヒーターをロールの内側に入れたのです。このことが、大きさ、コスト、温度コントロールのすべての面で優れていたのです。

スキー場その1

「私をスキーに連れてって」がヒットし、空前のスキーブームのまっただ中でした。いやもう少し遅かったか?でもスキーブームは続いていました。日本オリベッティーはいち早くリフト券の電子チケット化(受信装置、メモリーチップを内蔵した0.5cm×5cm×5cmのチケット)を実現し志賀高原一帯に導入されていたのです。

回収されたチケットを人手で整理し発券機に投入していたため、時間と手間と間違いが発生し、発券サービスに支障を来していたのです。自動整列機能付き発券機の開発が急務でした。日本オリベッティーではすでにパーツフィーダーを使用した試作機を作っていたのですが、コスト(パーツフィーダーは発券機より高い)大きさ(発券所の多くは狭い)よく詰まる(ホッパー形状の適正化) 等のことで行き詰まっていたのです。

私はホッパーの底をベルトにして、排出口の高さを6mmにしたのです。ベルト方式の試作1号機の完成度は高くそのまま、導入が決定されたのです。その後も日本オリベッティーはシェア60%を維持しました。(私も少しは貢献できたと思います)

なぜ日本オリベッティーの担当者が発想できず、私が発想できたのか?彼は《失敗しない設計》をしたのです。私は《成功を目指す設計》をしたのです。

パーツフィーダーは部品を整列させる最も優れていて、実績のある方法です。《失敗を恐れる》彼の選択は間違っていません。パーツフィーダーは振動によって部品を様々な向きにします、その中から求める向きの物だけをフィード(供給)する機械です(開発を進めれば必ず機能は達成できます)、ただ、今回の電子チケットはホッパーに入れたところで、すでに取り出すだけなのです。つまり振動する必要が無かったのです。振動工程を抜くだけで、コストダウン、小型化、高性能を実現したのです。

スキー場その2

これは失敗作です。この事例は書きたくないのですが、私自身を成長させてくれた案件だったので、書きます。 

解決すべき問題は次のようなことでした。 

お客様がゲート前で止まれずゲート板に当たってしまうことです。対策としてゲート板を折れやすい合板で作りお客様のけがを防いだのですが、年に数十本も折れ、ゲート板の長さが半分になっても使用している有様であった。これを折れる寸前で解放して、ゲート板の折れを0にしたい。 

すぐに構想が浮かびました。ただ、すでに決まったスペースの中に入れ込むことが難しいのです。工夫に工夫を重ね、なんとか完成し、志賀高原全山に導入されました。当然ゲート板は一枚も折れなくなりました。(要望通りの物を提供したのです。)ところが、もっと憂慮すべき問題が起こったのです。当たり前ですが、ゲート板に体当たりする人がいなくなったわけではありませんでした。チケットをカウントする方法はJRの(SUICA)と同じ方法です、当たっちゃう人はとてもチケットをタッチする暇が無いのです。カウンターの電波は意図的に短い距離しか飛ばしていないので、本人も気づかずに(カウントせずに)通過する事例が多発したのです。 

結局ゲート板をプラスチックにし、体当たりの人をプラスチックのバネ性を利用して受けることにしたのです。 

私もまだプロフェッショナルではなかったのです。つまり目の前の課題の裏に潜む問題を見抜く力が不足していたのです。

軸が消えた!?

小型パンコネ機の話です。

ポットの底にコネ羽根をつける方式のパンコネ機では、羽根をつける軸(シャフト)が真ん中にあります。下ごね方式の宿命です。これが洗うときに大変邪魔になるのです。何しろ1cmの太さで6cmの高さの軸があるのです。磁石で羽根をつける方法もあるのですが、とにかく業務用で一番小さなコネ機を作ろうとしていたのです。これからパン屋を開業する人(パン教室の生徒さんの中で開業を目指す人は意外と多いのです)のご負担にならないように安くしたかったのです。どこの会社の設計部も同じですが、保守的なのです。もちろん経営者も失敗してほしくないのが本音です。何しろ機械工学は紀元前からはぐくまれてきた技術です。 

非常識を常識にするよいチャンスだと思ったのです。今やエンジニアリングプラスチックという強い味方がいるのです。モーターと電気部品以外をすべて、プラスチック化し、軸(シャフト)を直径5cm高さ1cmの円盤にしてしまったのです。コストダウンと洗いやすさの二刀流です。この部門では、一番安いプロ仕様のパンこね機の誕生です。非常識を常識にする知恵と力です。私もいつの間にかこの力を得ていたのです。

こびと大作戦

皆さん、ボーリングはお好きでしょうか?小学校低学年以下のお子さんをお持ちの方で、ボーリングがお好きな方 KIDSーBALLの導入されているところでお子様とプレーしたことがおありでしょうか?申告すると、お子様の順番が来ると人知れずガター落下防止用ロープが張られお子様が楽しくプレイできる代物です。元々アメリカから輸入された物でした。ボーリングブームが去った後だったので、新規に導入するところがほとんど無かったのです。大きなモーターとリンクを床下に設置しなければなりませんでした。後からの設置となると、設置費用が馬鹿になりません、またレーンをはがすと同一条件にするには、一苦労するのです。日本オリベッティーの要求は

1:キッズボールセット自身を安くすること、

2:設置費用が安くなればさらによい

私はロープを張る12本の柱に模型用モーターを一個ずつ付け、このようにすると、ガターを外すだけで導入が可能になり、大幅な施工費のダウンになるのです。また、1個200円のモーター12個だったので、大幅なコストダウンになったのです。

大は小を兼ねるの反対をしたのです。逆転の発想です。また、大きなリンクシステムとモーターでは量産効果はあまり出ませんが、この1セットを12に分解したのです。、833レーンで、10000セット必要になるのです。大きな量産効果も期待できます。それがこの結果を導いたのです。皆さんがロープ式のガター落下防止装置を見つけたらそれは私の作った物です。 

0.1秒

これは紙を一折りするスピードです。私の知っている限り世界最速です。DNPからの依頼でした。長尺のシートを蛇腹状に折り、封筒に封入封緘する装置です。東芝精機製バースター(長尺のシートを一定の長さで切る装置)と、ドイツ製封入封緘機を与えられ、新規蛇腹織機を開発し、システムを完成する、という構想です。富士ゼロックスで同じチームを組んだN氏が私の腕を見込んで持ち込んできた物件でした。N氏のアイデアは、紙の搬送でよく起こるアコーデオンジャム(紙が蛇腹状に詰まる不具合)の原理を利用する、ということでした。構想は浮かんだのですが、私もさすがに、均一の幅をコントロールできるのか?製品化まで持って行けるのか?逡巡したのですが、N氏は、「ミシン目がはいっているから大丈夫だ、」に後押しされて引き受けたのでした(自分でも誰も出来ないことをやってやろう、との思いがフツフツと湧いてきたのです)。

紙を甘く見ていたのです。高速で紙を搬送すると紙にバネ性があるかのような挙動を示すのです。よく紙で指を切ることがありますよね!柔らかい紙のイメージを拭い去らねばならなかったのです。一折り0.1秒を実現するには、その1/10秒つまり0.01秒でコントロールしなければならないのです。ソニーの高速ビデオが強い味方になってくれました。苦労に苦労を重ね、特許までたどり着いたのです。

確かにアコーデオンジャムの原理を利用するアイデアはきわめて有効な、というか、このアイデア抜きに一折り0.1秒は実現しなかったのです。でもそれだけでは何も生まれないのです。良いアイデアを具現化する力が無ければ、夢は夢のままで終わってしまうのです。(P社のことを思い出しますね!)この力が無いと失敗するのです。(くどい!)

ジグ

ジグソーパズルの話ではありません。

治具と書きます。M社からの依頼でした。画像読み取りセンサーのチェック用です。確か、1200DPI(25.4mmの間に1200個の点ある)の解像度(どれだけ細かく見えるか)を実現するためのセンサーですからこれをチェックすることがまた、大変なのです。点の大きさは0.02mmです。従ってそれを画像から調べる治具の精度はさらに良くな無ければならないとのこと。こうなると治具の加工の仕方も問題になると同時に使用するときの室内温度も問題になります。ガラスにスケールを印刷し、これを正しく読み込めるかを調べるのです。限られた予算の中では困難なように思われたのです。予算の関係から結局ガラスのスケールは作れませんでした。ご指示いただいた精度に治具を制作したところ、これが当然高額な物になったのです。本当に検査時の室温を問題にする精度が必要だったのか?ほかに検査の方法はなかったのか?もしかしたら、失敗を恐れているのではないか?ご担当者に何度か確認をしたのですが、精度を下げることに同意してくれなかったのです。あの治具は使われているのだろうか? 私はプロとして、正しかったのか?いつまでも疑問の残るJOBでした。                                      

水漏れ

水漏れ110番の話ではありません。パンコネ機のポットのことです。こねる羽根が、ポットの底に付いているタイプです。少ない粉量の場合上からこねると、グルテンを切ってしまう欠点があります。下からこねると、生地の重さを利用できるので、手ごねの優しさが出るのですが、水漏れを防ぐシールの寿命が短く(パーフェクトにするにはステンレスの磨き抜かれた軸と精密な軸受け、テフロンなど高額なシールが必要です)また食品用グリスを使用するので、そのことも嫌われる原因となっていました。私は思いきって、シャフトをプラスチックにして、円盤シャフトとステンレスのポットの間にシールを入れたのです。しかもシールはゴムではなくプラスチックにしたのです。想定する水圧は工業用の想定している値より相当低くなることを利用したのです。結果は10000時間グリスなしで水漏れなしを実現したのです。若い頃の成功事例と、今の先端材料のおかげなのです。つまり新しい知識と古い経験の結合が功を奏したのです。

 

おいしいご飯

おいしいご飯のはなし、   つづく

在庫品

在庫開発物件(私が、具体的な新製品の構想がすでにある物)が現在14件ほどあります。お気に入りの物があれば、それをセレクトしていただきます。在庫内容は問い合わせフォームにてご連絡くだされば、開示させていただきます。本当は、自力でやりたいのですが、シュレッダー開発に集中しているため、手が出せないのです。全く新しい市場ではありませんが、趣味の世界になるかと思います。売り方さえ間違えなければソコソコのシェアはとれるでしょう。シュレッダー開発の目星が付けば、順次自力で開発するつもりですので、ご興味があれば、お早めにご連絡ください。在庫物件はなくなる物です。



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