2008年6月28日

鎌倉八幡宮の薪能が催されるのが、10月8,9日だから、この頃が「ウナギ」の旬である。近年は、夏場の土用の丑の日(今年は7月24日から8月4日まで)に「ウナギ」を食べる、と言うのが慣例になっている。

この風習は、江戸時代にさかのぼる。夏場あるいは冬には、あまり食べられていなかったらしい。ところで、時代小説にも「ウナギ」が登場する場面は多く、「鬼平犯科帳」での長谷川平蔵」や、「剣客商売」の秋山小平なども食している。いずれも食通で知られる故:池波正太郎の作品である。さらに、近頃人気急上昇の直木賞作家:山本一力作品「草笛の音次郎」でも、主役の音次郎が「ウナギ」を食べると、精力が付きすぎる。

しかし、独身の彼は吉原等の花街に繰り込まなければならなくなる。彼、随分と良い男ぶりなので、普通、嫌がられる「つづけ」(2回以上行うこと)をするわけであるが、つれあいの女郎には、喜ばれこそすれ、嫌がられることはなかった。と、書かれている。このあたり、鰯の頭でさえ発情してしまう、木下君にも同様な傾向がみられるが、本日のメーンではないので、詳細は書かない。

そう言った訳で、江戸庶民の「元気の素」として食べられていた様である。当時の本場とされるのは、神田川、隅田川その支流の小名木川、深川、築地などで、漁獲量も多かったらしい。従って、価格も比較的安かった。その「ウナギ」を使って商売していた訳だ。所謂、「ウナギ屋」は沢山有り、名店ランキングも発表されている。大関を筆頭に順次205店が並び競っていた。ランク外にも、100店以上有ったので、江戸100万都市に300店ほどの「ウナギ屋」が犇めいていた訳だが、店の多くは屋台商売だった。

ところで、その「ウナギ」脂っこいと言う理由で夏の売り上げは、さっぱりであった。(注、鰻の産卵時期が7~8月だから産卵前の脂が乗りすぎた時期のため)この商いが薄い時期にも「ウナギ」をたべてもらおうと、平賀源内の考え出した「土用の丑の日にウナギを食べると暑気あたりしない」のキャッチコピーで300店が一気に売り出した。

江戸前「ウナギ」の調理方法で特に違うのは、「蒸し」が入るところだろう。これで余分な脂が落ち、やわらかく夏場むきになる。これを多く江戸庶民が食べて暑さを乗り切っていたのだろう。

こんな「ウナギ屋」の陰毛・・・いや、陰謀がまるでチョコレート屋のバレンタインデーが定着したのと同じように、流行したのであろう。こうみると、今も昔もさほど人の心は変わらないようだ。今また、寒の土用の丑の日にも「ウナギ」をと宣伝している。



▲ページトップに戻る