2008年7月20日

報復

うちの木下君との姻戚関係は、全く無い木下順二さんに「夕鶴」と言う劇がある。所謂「鶴の恩返し」が元になっていて、助けた鶴がそのお礼に、自分の羽根で織った織物を贈る、ある日、見ないでくれと言われていたにも拘わらず、つい見てしまったので、お別れせずには居られなくなってしまう物語だ。

話自体は、木下君にも似ている部分はある。それは、見てはいけないものを、興味本位に覗き見ると言った行為で、ほとんどの場合守れない。ただし、私が昼寝の時、「木下君覗いちゃあ駄目だよ」と言えば、ゼッタイ覗かない。興味が無いからで、これが、月田さんだったら当たり前のように、のぞき見る。そを言う人である。

今日は、彼の話ではなく、家の近くで起こった実話に基ずき、お知らせしよう。ある日、瀕死の状態で見つけた“モグラ”を、つい気の迷いで助けてしまった。普通“モグラ”は、光を嫌うから、日中に見ることはない。それが、朝方ばったりと倒れていた。大きさはネズミくらいで手足は土を掘り返すのに、都合良く出来ている。

そいつは、どうも肘を痛めたようで、利き腕かどうかは定かでないが、右肘だ。わずかに出血もしている。そこで、傷口にはアカチンを塗り、割り箸を削り“添え木”にして肘を固定し冷暗所に隔離。急いで餌となるミミズを確保して与えた。すると三日ほどで、元気になったので、倒れていた元の穴付近に戻してあげると、こちらを何度も振り返り、頭を下げながら戻っていった。

こう言っちゃあ何だが、心がいかにも美しい。誰がって?私に決まっているじゃあないか。だから、「モグラ」だって助けるのである。でも本当に心が美しい人は見返りは求めない。そこえいくとかく言う私は、積極的にではないが、あったらいいかな?ぐらいには、と思ったりはする。

それから、数か月、大きな掘り起しの中に、数知れぬミミズがうようよ。皆さんは知らないかもしれないが、私はミミズをいただかない。おそらく、助けた「モグラ」の恩返しかもしれないが、却って迷惑である、心は美しいが、貧しい私には「報復」としか思えない。それにしても、同じ助けるなら「ツル」か「カメ」が良いようだ。



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